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2026-09-21 13:41:40 +09:00

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08 性能・受入試験設計

1. 検証方針

PDFの正確な表示を最初の品質判断とし、その後にキーボード操作、HTML/ZIP/EPUB、設定、Linux/Windowsでの動作を確認する。要件IDは01に対応する。本書は試験計画であり、アプリケーションの実装、性能計測、各試験の合格を報告するものではない。

数値は未測定の性能予算である。最低環境、実利用文書、PDFium・Qt WebEngineの組合せを固定して測定し、目標変更が必要な場合は09の意思決定記録へ理由と影響を残す。

2. 受入試験

2.1 試験の読み方

以下は試験の設計であり、合格済みの結果ではない。PDFを優先して実装・検証するが、全要件に対応したリリースの完了判断にはHTML/ZIP/EPUBと両OSの試験が必要となる。

試験データは再配布権を確認し、ファイルのハッシュ、出典、フォント条件、期待されるページ数・リンク先を固定する。PDF描画の正解画像は評価対象と同じ描画エンジンから作らず、独立した既知の表示環境または原版から用意し、その作成環境を記録する。

2.2 要件対応試験表

試験ID 要件 入力・操作 合格条件
T01 R01 埋込フォントあり/なし、日本語・縦書き、ベクター、透明合成、画像、各種ページ寸法、回転、CropBoxを含むPDFを開く 期待する文字・図形・画像が欠落/置換/不正配置されず、ページ寸法・回転・可視範囲が正しい。指定倍率・両OSで確認
T02 R01 PDFの1ページ目、途中、最終ページへ移動し、ズームを変更する 正しいページを描画し、古いページの描画結果が現在ページへ混入しない。位置保持規則を満たす
T03 R01, R11 数千ページのPDFを開いて末尾へ直接移動する 全ページの描画を待たずに要求ページを処理する。UIが応答し、不要な要求を取り消せる
T04 R02 相対CSS、画像、文書内アンカー、別HTMLリンクを含むローカルHTMLを開く 仕様で対応対象の資源を表示し、相対参照とアンカーが正しく解決される
T05 R03 ディレクトリ構造を持つZIP内index.htmlからCSS・画像・別HTMLへ進む アーカイブ内で参照が解決し、リンク先が正しく表示される。入口不在/複数時は定義した結果になる
T06 R04 EPUB 2/3の目次順とspine順が異なる本、縦書き/RTL、固定レイアウトを開く 次/前章はspine、目次は目次宛先に従う。章境界、nonlinear項目、書字方向、固定viewportが仕様どおり
T07 R05, R15 マウスなしで開く、スクロール、指定PDFページ移動、目次選択、パネル切替、別文書を開く すべて実施でき、入力待ちとフォーカスが分かる
T08 R05 同じキーを内容、目次、ページ一覧、文字入力の各状態で入力する 状態表どおりに振り分けられ、文字入力中に閲覧位置が変わらない
T09 R05, R12 日本語IME変換中にj/k、数字、Enter、Escを入力し、日英配列で記号キーを操作する IME操作が閲覧コマンドにならない。日英配列で設定された論理キーを入力できる
T10 R05, R10 キー列の期限切れ、Esc、フォーカス変更、接頭辞の長押しを試す 未完のキー列が残らず、予期せぬ操作・連続した表示切替が起きない
T11 R06 PDFの構造見出しのみ/アウトラインのみ/双方あり/双方なし、HTML/EPUBの見出し、同宛先の重複見出しで次/前を操作する 出典と位置を区別し、04の優先順位で移動する。見出しなしは明示し、推測の見出しを生成しない
T12 R07 多階層目次を展開/折りたたみ、項目を選択する 選択だけでは本文を動かさず、確定時に正しい宛先へ移動する。不正な宛先でも他項目を操作できる
T13 R08 目次・ページ一覧・ステータスを個別に切り替える 個別に反映し、フォーカス中のパネルを隠すと内容へ戻る。隠れた領域が空白として残らない
T14 R08, R15 明暗テーマ、100%/200%表示スケールでPDFを表示する アプリ外観のみテーマが変わり、PDF原文の色を変更しない。主要操作・文字が欠けない
T15 R10 有効なキー設定と表示設定を書き、再読込する 全体の検証後に一括適用し、操作一覧も新設定になる
T16 R10 構文誤り、型誤り、範囲外値、重複/接頭辞衝突のキー設定を読む 行/項目と理由を知らせ、直前の有効な設定を維持する。部分適用しない
T17 R12, R13 LinuxとWindowsの初回起動、非ASCIIユーザー名、パスに空白、読み取り専用設定ディレクトリで起動する 各OSの配置規則を満たし、パスを破損しない。書けない場合でも利用可能な既定設定で開始し、対処可能な通知を示す
T18 R14 静的注釈・popup・widget・保存済みフォーム外観・外観欠落を持つPDFを表示して操作し、終了する 文書に既にある内容は対応描画範囲に従って表示するが、編集・入力・保存を提供しない。原本ハッシュが変わらない
T19 R09 設計レビューで別形式アダプターの追加手順と依存関係を追跡する UI固有処理へパーサーを埋め込まず、文書能力・位置・ナビゲーション契約で接続できる。採否は設計レビュー記録で残す
T20 R11 次節の代表文書と操作列を両OSで測定する 合意された測定条件と性能予算を満たす。実測値・分位値・失敗数を記録する
T21 R01-R04, R05 破損、読めないファイル、必要資源欠損、読込途中でEscを押す、または別文書を開く 明確なエラーまたは部分表示の状態を示す。クラッシュせず、旧要求の完了が新文書を上書きしない

2.3 PDF描画の判定

PDFの正確性を単一の画素一致率だけで判定しない。アンチエイリアスや色管理の違いがあるため、少なくとも以下を確認する。

  1. ページ数、ページ寸法、回転、切り抜き範囲の一致。
  2. 文字・グリフの欠落、豆腐表示、順序違い、画像欠損、合成順序違いがないこと。
  3. 正解画像との重ね合わせによる図形・文字位置と可視領域の一致。
  4. 透明・マスク・グラデーション・色空間など、PDFエンジン依存箇所の目視比較。
  5. 低倍率・標準倍率・高倍率および表示スケール差の確認。

差分画像は検出補助として保存し、許容できる縁の差と本文の欠落を分けて判定する。画素差の閾値は代表コーパスで校正してから確定する。現時点で「99%一致なら正確」等の数値を保証値として置かない。

3. 性能測定設計

3.1 指標と暫定目標

以下の数値は、実測前の提案する性能予算であり、現在の達成値ではない。基盤選定時の試作測定で達成可能性を確認し、製品の最低動作環境とともに確定する。

指標 起点と終点 標準コーパスでの暫定予算
入力への視覚応答 キーイベント受領→移動/選択/読込中表示が画面へ提示される p95 ≤ 50 ms
開く操作後の最初の内容表示 ファイル選択確定→最初に読む内容を判読できるフレーム提示 アプリキャッシュなしp95: PDF 2 s、HTML 2 s、ZIP HTML 5 s、EPUB 5 s
キャッシュ済みPDFページ移動 ページ移動キー受領→対象ページの最終品質フレーム提示 p95 ≤ 100 ms
未キャッシュPDFページ移動 ページ移動キー受領→対象ページの最終品質フレーム提示 標準コーパスp95 ≤ 500 ms
継続スクロール 同一の操作列のフレーム間隔を取得する 60 Hz環境でp95 ≤ 33 msを目安とする
プロセス群のメモリ アプリ・PDFワーカー・WebEngine等を含むRSS合計 標準コーパスの通常閲覧で1 GiB以下を目標とする。厳密なハード上限ではない
キャッシュメモリ 文書描画キャッシュの実使用量 設定上限を超えない。プロセス群のRSSとは別に記録

PDFを開く際に小さいプレビューだけを先に描く設計なら、「最初に判読可能な表示」と「最終品質到達」を別々に測る。HTML/EPUBでは最初の文字だけを出してスタイル適用を遅らせた状態を完了にしない。必要なCSSと表示範囲内の主要な内容が反映された時点を記録する。

3.2 コーパスの構成

区分 代表例 目的
標準PDF 100 MiB以下/500ページ以下の代表群、文字中心、画像混在、埋込日本語フォント 日常の読書操作と開く時間
重いPDF 1 GiB/5,000ページ規模の代表群、大きいスキャン画像、複雑な透明/ベクター 長時間停止を防ぐ処理、キャッシュと取消
HTML 100 MiB以内の参照資源群を持つ長い見出し構造、CSS、ローカル画像 レイアウト変更と見出し移動
ZIP HTML 圧縮時100 MiB以下、展開後500 MiB以下、複数階層の相対リンク、画像資源が多い書籍 展開・入口解決・内部リンク
EPUB 100 MiB以下/500 spine項目以下、画像混在、日本語、章数が多い例 spine移動、章の切替、位置保持

これらのページ数や容量は試験セットの選定目安であり、それだけで入力上限を決定しない。アーカイブ展開量等の安全上限はセキュリティ仕様と整合させる。極端な文書には標準コーパスと同じ表示時間を一律に保証せず、応答・取消・資源上限の維持を優先して別枠で評価する。実際に採用した各ファイルのハッシュと特性を試験報告に固定する。

3.3 再現可能な測定手順

  1. 暫定の基準機は物理4コア相当のCPU、メモリ8 GiB、SSD、内蔵GPU、1,920×1,080/60 Hzとする。LinuxとWindowsの対象バージョン、CPU型番、コア数、メモリ、ストレージ、GPU、ドライバー、表示解像度/倍率、リフレッシュレート、アプリと描画エンジンのバージョンを記録する。同じ構成の比較を基本にする。
  2. 冷起動はアプリのキャッシュなしで測る。OSファイルキャッシュを消していない場合は、その事実を明記して「完全コールド」と呼ばない。アプリを開き直すだけの試験と区別する。
  3. 読込試験は文書ごと30回を目安とし、p50/p95、最小/最大、失敗数を報告する。p95の安定性が不足する場合は追加測定する。
  4. 操作試験は固定したページ/見出し/章の移動列を最低100操作実施し、キャッシュヒットとミスを分離する。入力時刻と実際の画面提示時刻を計測し、要求を送っただけの時刻で完了にしない。
  5. キー長押し、遠いページへの連続ジャンプ、ウィンドウのリサイズ、別文書への切替を含め、古い仕事を破棄した回数、描画待ちの数、UI停止時間も記録する。
  6. メモリはアプリ単体と補助プロセスを含むプロセス群を分けて測る。開始時、最大、文書閉鎖後の使用量を記録し、同じ文書を10回開閉して無制限増加しないか確認する。OSのRSSが直ちに基準値へ戻らないことだけでリークと断定しない。
  7. 最低動作環境の正式決定後、その環境で受入判定する。高性能な開発機だけの達成を製品保証としない。

4. 補助機能の試験

以下は01・04の追加提案を採用した場合の受入条件である。必須要件の合否と区別する。

試験ID 対象 合格条件
T-P01 本文検索 日本語/英語で検索でき、n/Nで正しい位置へ移動する。画像PDFは文字情報なしを示し、勝手にOCRを開始しない
T-P02 検索中の入力 IME変換・Enter/Escが閲覧操作にならない。検索取消後に古い結果が新しい文書へ反映されない
T-P03 位置復元 同じ文書の再開位置が復元される。リフロー時は論理位置を使い、原本が変化した場合は不正な位置を適用しない
T-P04 最近使った文書 保存上限・無効化・履歴消去が機能する。削除済みの原本は理由を示し、別ファイルとして誤って開かない

5. 異常系・非機能の追加確認

07の安全境界の設計が実際に有効であることを、通常文書の試験とは独立して確認する。以下の拒否は仕様に基づく挙動であり、アプリケーションのクラッシュを合格としない。

試験ID 対象 合格条件
T-S01 ZIPの絶対パス・親ディレクトリ参照・シンボリックリンク・展開量超過 07の規則で拒否し、許可ルート外へファイルを書かない。中断した一時領域を回収する
T-S02 HTML/EPUBの外部URL・文書スクリプト・フォーム・ローカルルート外参照 07の通信/参照規則を守る。文書から任意のファイルやOS機能へ到達できない
T-S03 PDFワーカーの異常終了・固まった読込・不正な応答 UIは応答し、対象文書の失敗を示す。古いワーカー応答を新文書へ適用しない
T-S04 データ消去・一時ファイル回収 読書履歴等の対象を区別して消去し、原本を消さない。異常終了後の一時領域も起動時の規則で回収する
T-S05 配布物からの初回起動 WindowsとLinuxの対象環境で依存ライブラリ、サンドボックス、WebEngine資源、ライセンス同梱が成立する

6. 合否の記録と完了条件

試験報告には、試験ID、要件ID、対象ビルド、OS/表示環境、文書ハッシュ、手順、期待結果、実結果、証拠画像または計測記録、判定、既知制限、再試験条件を記載する。未実施と失敗を区別し、将来機能の保留を必須要件の合格に置き換えない。

完成版の受入条件は次のとおり。

  1. R01〜R15に対応するT01〜T21が、対象OSで合格している。PDF描画の対応範囲は03と一致し、検出可能な未対応要素を通知する。実行時に検出できない描画差はコーパスの比較試験で判定する。
  2. T-S01〜T-S05の隔離・入出力・回復・配布確認が完了している。
  3. 合意された基準機・コーパスで性能予算を達成している。未達項目があれば、制限と判断を記録して受入判断を行う。黙って目標値を実績値へ書き換えない。
  4. 補助機能を採用した場合は対応するT-P系列の試験が完了している。
  5. 残っている問題が、原文の欠落、データ破損、キー操作不能、原本書換え、UI長時間停止を引き起こさない。