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2026-09-21 13:41:40 +09:00

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09 技術選定・設計判断・実装ロードマップ

対象: DocView(仮称)/設計日: 2026-09-19/状態: 設計基準案

1. 採用構成

Qt 6 / C++20 / Qt Quick を用いたデスクトップ GUI とし、PDF は独立プロセスの PDFium、HTML と EPUB は Qt WebEngine で表示する。 UI は TUI 風の簡潔な外観と Vim 風キーボード操作を備える。今回の成果物は設計書であり、アプリケーションの実装・試作・性能測定は含まない。

Qt、PDFium、WebEngine、ZIP ライブラリ、フォント、ビルドツールの具体的な版は、実装開始時にサポート状況と検証結果を確認して固定する。PDFium は公開 C API を使用し、取得元、コミット、ビルドオプション、成果物のハッシュを記録する。最新版へ無条件に追従せず、修正版の評価と回帰試験を伴って更新する。

2. 候補比較

下表の評価は本アプリケーションの要件に対する設計判断であり、各製品の公式な優劣評価ではない。描画精度の順位を示す比較試験は未実施である。

候補 適合する点 本件で負担となる点 判断
Electron + PDF.js Web 技術による UI、HTML、EPUB の統合が容易。PDF.js を個別更新できる Electron / Chromium / Node.js / PDF.js の更新と権限境界を管理する。PDF 互換性は別途検証が必要 代替候補として保存
Qt Quick + Qt PDF + Qt WebEngine Qt PDF の目次、リンク、検索、ビューア部品を利用できる 確認した Qt PDF 公開 API に PDF 構造タグの取得 API がなく、アウトラインなしの tagged PDF の見出し対応が不足する 不採用
Qt Quick + 直接 PDFium + Qt WebEngine PDF 描画、構造、座標の制御を一つのアダプターに集約できる。PDF 処理の障害を GUI から分離できる ワーカー通信、キャッシュ、表示部品、ビルドと更新管理が必要。構造関連 API の一部は Experimental 採用設計
Qt Quick + MuPDF + Qt WebEngine PDFium と異なる描画系として比較できる AGPL または商用ライセンスと配布方針の整合を検討する必要がある。別途統合と検証が必要 採用再検討時の候補

公式の機能・ライセンス・API 根拠は 参考資料 の S01-S14 を参照する。PDFium が PDF.js より常に正確、または Qt を使うだけで軽量になるとは判断していない。Qt WebEngine を含めた配布サイズとメモリ量を測定対象にする。

3. 設計判断記録

ID 決定 根拠と結果 要件
ADR-001 デスクトップ GUI と TUI 風 UI を採用 利用者が GUI を選択済み。PDF は本来のレイアウトを保持して描画し、周囲の UI を簡素化する R01, R05, R08, R15
ADR-002 PDFium の公開 C API を独立ワーカーに集約 tagged PDF の構造情報と描画を同じ PDF バックエンドで扱う。Qt PDF の private API は利用しない R01, R06, R07, R09
ADR-003 PDF ワーカー内の PDFium 呼び出しを直列化 PDFium API は thread-safe ではない。UI と独立したキューで実行し、採用版で確認した中断方法とプロセス終了による回復を設計する R11, R12
ADR-004 HTML / EPUB に Qt WebEngine を使用 現代的な CSS、縦書き、フォント等をブラウザ描画系に委ねる。EPUB のコンテナー、目次、読書順序はアプリ側で扱う R02, R03, R04, R06, R07
ADR-005 PDF 描画ルートを一本化 Qt WebEngine 内蔵 PDF ビューアを無効にし、PDF リンクはアプリの PDF オープン処理へ渡す。Qt PDF と直接 PDFium を併用しない R01, R05, R09
ADR-006 文書内容とアプリ操作の権限を分離 文書を未信頼入力として扱い、文書のスクリプトや設定が任意ファイル・外部通信・OS コマンドへ到達しない境界を設ける R02, R03, R04, R09, R10
ADR-007 既存の見出し情報を使う PDF outline と構造タグ、HTML 見出し、EPUB の目次を区別する。文字サイズからの見出し推定を必須機能にしない R06, R07
ADR-008 PDF は閲覧専用とする 元ファイルを書き換えない。既存の注釈や保存済みフォーム appearance の表示と、編集操作の提供を分ける R01, R14
ADR-009 設定と文書アダプターを分離 キー入力はコマンドへ変換し、フォーマット固有処理はアダプターへ委譲する。設定ファイルは OS の慣習に沿って配置する R05, R09, R10, R13
ADR-010 初期サポート OS を明示する Linux 全般という無限定な互換性保証を避け、実機検証済みの組合せをサポート表で公開する R12

Qt WebEngine 自体にも PDFium 由来コードが含まれ得るため、ADR-005 は配布物全体から PDFium の重複がなくなることを意味しない。独自 PDF ワーカーと WebEngine は、それぞれの依存部品と更新責任を記録する。

4. 実装前の技術ゲート

G0は以下の技術ゲート一式を実施する段階の総称である。以下は後続実装で採用構成を確定するための条件である。本設計時点で合格を確認したものではない。画質判定と性能の定量基準は品質・試験設計に定義する。

ゲート 検証内容 合格条件・証跡 不合格時の判断
G-RENDER 代表 PDF の描画。日本語横組み・縦組み、埋込/非埋込フォント、CID/CMap、透明、クリップ、画像、回転/CropBox、ICC/CMYK、既存注釈、保存済みフォーム appearance 人が承認した正解画像との比較と差分レビューを完了。文字・図の欠落、誤配置、読めない描画が残っていない PDFium の設定・版を見直す。要件を満たせなければ別エンジンを比較し ADR を更新
G-HEADINGS outline なしの H/H1..H6、RoleMap、複数 MCID、Form XObject、回転、ページにまたがる構造 見出し列と順序が妥当で、正しいページ・位置へ移動する。座標が得られない場合のページ単位移動を区別して報告できる 必要な公開 API の不足を特定。黙ってタグ対応を省略せず、アダプター/エンジンの再選定へ戻る
G-SANDBOX Linux と Windows の PDF ワーカー権限制限、クラッシュ回復、IPC 境界 許可された入力と通信のみ成功。任意パスの読取・書込、外部通信、子プロセス生成を拒否する試験の記録。GUI が継続しワーカーを再作成できる 配布対象ごとに制限方式を再設計。sandbox を無効化する起動オプションを通常運用の解決策にしない
G-WEB 文書別 origin、文書スクリプト抑止、アプリ所有の isolated world 操作、読み取り範囲、ページ遷移、リンク、ダウンロード、通信遮断、内蔵 PDF ビューア無効 HTML / EPUB の表示と見出し操作が機能し、書籍からアプリ権限や許可外リソースへ到達しない。通常 HTML と ZIP / EPUB の双方で確認 Qt WebEngine 設定・scheme handler・操作経路を修正。文書 JavaScript を広く許可して回避しない
G-DISTRIBUTION クリーン OS 環境での配布と依存・ライセンス確認 ランタイム、プラグイン、WebEngine 補助プロセス、フォント、PDFium 等の不足なし。配布物と対応ソース・告知・依存一覧の対応が確認済み パッケージと採用条件を見直して再試験

PDF 正解画像は一つのビューアの出力だけで無条件に決めない。仕様に基づく期待、複数の独立した描画系、元文書の作成条件、人による確認を使う。アンチエイリアスの軽微な差と内容の欠落を同じ問題として扱わない。特殊な印刷表現や壊れた文書は、対応範囲・既知制約を明記する。

PDFium の構造タグ API には Experimental な項目がある。必要な API の一覧、固定コミット、文字列長・寿命・エラー処理、MCID と座標の対応を検証記録に残す。見出しのラベルを得ても、正しい位置へ移動できたとは判定しない。

5. OS と配布方針

環境 初期方針 必須確認
Windows 11 x64 正式サポートの提案対象 クリーン環境、表示倍率、IME、非 ASCII パス、ワーカー権限、署名済み配布物、アンインストール
Ubuntu 24.04 x64 正式サポートの提案対象。X11 / Wayland を個別に確認 GPU と software rendering、フォント、IME、ファイル選択、sandbox、Qt / WebEngine の共有ライブラリ依存
Fedora x64 追加検証対象 対象版を実装時に選定。Wayland、SELinux、ライブラリ、sandbox、パッケージ形式を検証してからサポートを宣言
その他 Linux、Windows on ARM、旧 Windows、macOS 初期の正式サポートに含めない 要望と検証コストに基づき別途追加

Qt の一般的なサポート対象と、本アプリケーションで検証した対象は区別する。Qt WebEngine には独自のビルド制約があり、一般的な Qt 構成のすべてを利用できるわけではない。確認した資料では Windows の MinGW ビルドは Qt WebEngine に適合せず、静的ビルドも非対応である。Qt WebEngine Platform Notes

Windows は MSVC 系の Qt と互換性のあるツールチェーンを使い、PDFium のビルドは upstream の Clang 系要件と整合させる。Linux では対象環境に合う共有ライブラリと sandbox を梱包・依存解決する。具体的なパッケージ形式は G-DISTRIBUTION で比較し、初期対象ごとに一つを決める。単一実行ファイル化や任意 Linux での起動を前提にしない。

ライセンスはライブラリ名だけで結論を出さず、実際に同梱する版・モジュール・ビルド方式で確認する。Qt 商用ライセンスの採用だけで Chromium 等の第三者条件が消えるとは扱わない。MuPDF は代替評価対象にとどめ、ライセンス整理を行わず自動フォールバックとして同梱しない。

6. 後続の実装順序

段階 完了させるもの 次へ進む条件
0. 設計基準の固定 対応範囲、テスト文書、参照画像、初期 OS、設定形式、依存版、ライセンス方針 未決事項の担当と期限が決まり、上記ゲートの評価環境が用意されている
1. PDF 基盤の検証 描画、構造見出し、座標、ワーカー制御、権限制限、最小配布経路 G-RENDER / G-HEADINGS / G-SANDBOX を満たし、配布成立の見通しがある
2. PDF 閲覧機能 通常表示、移動、拡大縮小、目次、見出し、ページ一覧、設定、状態復元 PDF の機能・性能・操作性の受入試験に合格
3. HTML / ZIP HTML / EPUB パッケージ読込、リソース解決、目次、見出し、読書順序、位置復元 G-WEB と各形式の受入試験に合格
4. 製品化 OS 別配布、クリーンインストール、更新、障害回復、ヘルプ、告知文書 全対象 OS の回帰試験と G-DISTRIBUTION に合格

PDF 最優先は開発・検証順序を意味する。最終的な初期リリースが要件を満たすためには、HTML、ZIP HTML、EPUB を含む全必須要件を受け入れる必要がある。PDF のみの中間成果物を要件一式の完成とは扱わない。

7. 継続管理する不確実性

項目 設計時点の扱い 解消時点
実際の書籍での PDF 描画互換性 代表コーパスは後続で収集・承認。完全一致は未保証 G-RENDER
tagged PDF の全構造と座標 公開 API による経路を採用し、特殊構造は要検証 G-HEADINGS
PDFium の固定版と更新頻度 実装開始時にコミットを固定し、脆弱性・互換性を継続評価 段階 0 以降
ワーカーの OS 別権限制限 別プロセス化と sandbox を別の要件として扱う G-SANDBOX
WebEngine の文書操作と無権限化の両立 文書の JavaScript とアプリ所有の操作を区別して検証 G-WEB
配布ライセンスとパッケージ方式 実際の依存集合に基づいて固定 G-DISTRIBUTION
性能の成立 品質・試験設計の測定条件と合格値を使用。未測定 各段階の受入試験